Rin

プラウダ(真実)のRinのレビュー・感想・評価

プラウダ(真実)(1969年製作の映画)
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(別媒体から感想を転記)

2024/05/22
JLG全部観る18本目。ゴダールがプラハの春の直後のチェコスロヴァキアを撮り、政治的なメッセージを込めに込めて編集した作品。ゴダールこのままで大丈夫かなと心配になる。

1968年、チェコスロヴァキアではドプチェクが「プラハの春」という民主化運動を繰り広げ、言論の自由の保証などの「人間の顔をした社会主義」を目指したが、結局ソ連ブレジネフ政権の軍事介入を招いて失敗裏に終わった、ということを受験以来久々に思い出す必要があった。全ての単語が懐かしい。

なんとか思い出せたかのように書いてしまいましたけど実際はもちろん思い出せなかったプラハの春周辺情報がたくさんあって、それでなくとも難解なナレーションばかりだし字幕の量は多いしで頭の容量を食うのに記憶を引っ張り出す作業も加わるともうパンクします。仕事終わりに観る映画じゃないっ!

『ひなぎく』の監督のヴェラ・ヒティロヴァがインタビューされるシーンが出てきて、彼女が喋ってる姿を見られるなんてと喜んでいたら、突然ナレーション(声はゴダール本人)で「西欧かぶれ ヴェラ・ヒティロヴァ」と断罪しやがった。そんなことないよね。ヒティロヴァかわいそう。

このヴェラ・ヒティロヴァ批判の前には、
「労働者が娯楽映画の上映を望んだのか?違う」
「ここでもハリウッドのように大衆向けの映画を作る。大衆からの映画ではない。人民の立場から作る映画ではない。要するに敵側の映画だ」
という前置きがある。

その前置きとヴェラ・ヒティロヴァに対する批判ナレーションを聞いた時、私は『勝手にしやがれ』の冒頭でB級娯楽映画の製作会社のモノグラムピクチャーズに献辞が捧げられていたことに思いを馳せて、この『プラウダ(真実)』はゴダール自身の自己批判であり再教育なんじゃないかなと思ったのでした。
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