にゃんこむ

ネコを探してのにゃんこむのレビュー・感想・評価

ネコを探して(2009年製作の映画)
4.0
監督が日本人と猫の絆に着目したから日本のシーンが多いのですが、内容は結構辛辣で批判的。「世界中のかわいい大人気ネコたち勢揃い!」なんてパケ詐欺も良いところ!(笑)

19世紀以降は自由と自立の象徴でもてはやされた猫。
しかし、猫は犬と比べて時代や宗教によって迫害されたり優遇されたりいろいろと大変だったらしいですね。
『猫が教えてくれたこと』はトルコの古都イスタンブールに限局し、猫と地元の人々との絆を描いた作品ですが、こちらはもっと猫の歴史や人間に対する啓発的な作品です。

可愛いパッケージとは裏腹に、開始早々日本の港町で水俣病を発症し健康被害に遭った猫達のお話だったり、その中毒状況を調べる為に捕まえられて実験で殺された猫のお話だったり、辛い内容が多かったです。
他にも、猫という自由の象徴が、いまや消費の対象であり、着たくもない服を着せられたり、”かわいい”ことが重要視される商品になってしまっていたりと、人間と関わってしまった事による猫の苦難にも着目されています。

もちろん、パッケージで紹介されている猫ちゃん達も出てきます。
まず初めに和歌山県紀の川市の和歌山電鐵貴志川線貴志駅で”駅長”を務めた、たま。
たまは人気のないローカル線に就任し、地域貢献をした猫として紹介されていました。
そこから鉄道繋がりで、駅などでネズミから食料を守った猫達のお話へ。時代の流れとともに、多くの猫は解雇されてしまいましたが、”鉄道員”のエリカは蒸気機関車と共に暮らしています。鉄道と猫とは切り離せない存在であり、鉄道の風景の一部として猫を残すためです。(本当はどうだか知りません。鉄道員さんたちが猫を飼いたかったからじゃないの?と個人的には思います(笑))

次に”カメラねこ”のミスター・リー。飼い主さんが開発したカメラを首輪につけ、日々暮らしています。私も家に設置するタイプのライブカメラを購入して、猫が避妊手術で安静にしていなければいけない時に外出先から様子を見たりしていました。元気になって部屋から解放してからは、ほとんどカメラに映らないので設置はしていませんが、人間がいない場所で猫がどんな事をしているのか気になるという心理はよくわかります。

次の猫は、”お泊りねこ”のジンジャー。猫と遊べてしかも泊まれるというなんとも豪華なキャット付きホテルで暮らす猫ちゃんです。
日本でも、猫付き旅館など増えていますよね。
個人的にはとっても行きたいのですが、猫カフェMOCHAの一件から、他の猫ちゃんがいる場所にはちょっと怖くて行けなくなりました。真面目に猫ちゃん達の健康管理をしているところばかりで、完全に風評被害だとは思うのですが、万が一の事を考えてしまって気軽に行けなくなりましたね。

最後に”おくりねこ”のオスカー。病院に暮らし入院患者の心のケアをする猫ちゃんです。病院では、体が弱ったり、認知機能が低下し他の人と交流しなくなってしまった患者さんたちもいます。しかしオスカーはそういった人々の心に寄り添って最後の最後まで付き添います。私も死ぬときは傍に猫がいて欲しい。

最後まで見て思ったのは、
この作品に「世界中のかわいい大人気ネコたち勢揃い!」なんて謳い文句をつけてしまうなんて、なんという皮肉だと思いました。
多分、内容を観てない人がつけたのか、真実のままだと売れないと思ったから可愛い猫ちゃん系映画に見せたかったのか知りませんが……この作品はそういう人間の安易な”かわいい”という価値観で物事を図る事に関して批判しているのに……。
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