Maoryu002

バージニア・ウルフなんかこわくないのMaoryu002のレビュー・感想・評価

4.1
中年の万年助教授ジョージ(リチャード・バートン)と学部長の娘マーサ(エリザベス・テイラー)がいつもの夫婦喧嘩を始めたところに、招かれた若夫婦がやってくる。彼らはマーサとジョージの醜い喧嘩に巻き込まれ、やがて、マーサが息子の話を始めたところから、彼らの言動は常軌を逸していく。

「卒業」「心の旅」のマイク・ニコルズの監督デビュー作。
観ていて楽しくはないけど、内容と演技に圧倒された。

ガサツで夫を見下すマーサと、彼女に負けているようで実はじわじわ反撃していく夫ジョージ。
“ヘドが出る” と罵り合い、初対面の若い夫婦にも絡みまくる。

ジョージ・シーガルとサンディ・デニス演じる若夫婦からしたら大迷惑だし、絶対に招かれたくなった家だろう。
観ている方も、もの凄い居心地の悪さと緊張感が続く。

マーサとジョージは確信をもって傷付け合い、それが自分の役割だと言い切る。
特に後半は狂気に満ちていき、彼らは夫婦関係を良くするきっかけが欲しいのか、自分の正当性に同意して欲しいのか、見極めようと観ていたら、なるほど。

そこは虚構と妄想の世界。
狂気の中にある深い愛情を見せられた気がしたが、同時に “ふざけんな!巻き込むな!” と怒りがこみ上げるとともに、手玉に取られた気分になる。

舞台では見えづらいだろう手元の動きや、顔のアップで感情が見えるのは映画ならではの良さで、特に顔で強烈な下劣ぶりを見せるエリザベス・テイラーの演技は圧倒的だ。
彼女の “I'm just beginning!” が怖かった。

最近だと、「フェンス」でのデンゼル・ワシントンとヴィオラ・デイヴィスの演技合戦がこれに近かったかな。
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