櫻イミト

地上最大のショウの櫻イミトのレビュー・感想・評価

地上最大のショウ(1952年製作の映画)
2.0
デミル監督唯一のアカデミー賞作品賞受賞作。 世界最大のサーカス一座を舞台に、空中ブランコやパレードショーを紹介。間に団員たちのドラマが挿入される。ジェームズ・スチュワートが主要キャストの一人なのだが最初から最後までピエロのメイクで出演している。

2時間30分の内、最初の2時間は殆どがサーカスの準備風景とショーをニュース・中継映像のように切り取っている。空中ブランコのライバル同士の小さな物語が挿入されるが、全体的に映画的な撮影の工夫は見られない。最後の30分で大きく物語が動き演出が入る。このパートだけが見所だった。

戦前のデミル監督の史劇中心の作品群は見世物要素が盛り込まれているのが魅力なのだが、戦後(晩年)は健全になってイマイチな印象。本作も折角サーカスと言う題材なのに、見世物というより”ショー”と言う健全な印象。個人的にはオフュルス監督の「歴史は女で作られる」(1956)のサーカス描写の方がずっと好みだった。本作当時のデミル監督は「赤狩り」に走っていて、フォード監督とぶつかり協会評議員の地位を追われたのは直前の1950年のことである。ただし遺作の「十戒」(1956)は最後の気合が感じられた。

本作について淀川さんも双葉さんも楽しかったと褒めているので、当時は大きなサーカスを映画館で鑑賞できるということ自体が貴重な楽しみだったのかもしれない。現在視点で観ると最初の2時間は退屈に感じると思う。

※「フェイブルマンズ」(2022)の中で、本作公開当時に自主映画を上手に作った主人公の少年が「デミル監督のようになれるぞ!」と褒められていた。デミル監督はアメリカでは巨匠監督の代名詞だったのだと再認識した。
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