ベルベー

リプリーのベルベーのネタバレレビュー・内容・結末

リプリー(1999年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

アンソニー・ミンゲラとはイマイチ相性が合わない…って学生時代に観た「イングリッシュ・ペイシェント」と「コールド マウンテン」がどちらも世間的な評価に対してどうにもハマれなかったというだけなんだが、これは結構良かった。

原作未読で同じ原作の「太陽がいっぱい」も観たことがないんですが、リプリーのディッキーに対する感情は原作ではわりとちゃんと描かれていて「太陽がいっぱい」では醸し出される程度で、そして「リプリー」では露骨に前面に出されたって塩梅じゃないかと勝手に思った。そこで差別化してるんだぜ!って圧を感じたから笑。パトリシア・ハイスミスの作品は「キャロル」にせよ本作にせよ、同性愛が物語の中心ないし根幹にある。「見知らぬ乗客」も原作を読んだら、映画とは違う印象かもしれないと思った。ヒッチコックはそっちの要素を掬える人ではないので。

それにしても、行き当たりばったりの犯行を繰り返しているのに運が良すぎて逃げ切れてしまうことを一種の悲劇として描いているのが趣深い。リプリーはその生き方を止めない限り大切な人を失い続けるのだが、もう引き返すこともできない。マット・デイモンの陰気な笑顔も不気味さと悲壮感を漂わせていて良い。ジュード・ロウは「ガタカ」といい、よく別人に為り代わられる。その他グウィネス・パルトロー、ケイト・ブランシェット、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジャック・ダヴェンポートと豪華絢爛なキャスト。

作品を彩るイタリアの景観とジャズ音楽も素敵。素敵だからこそ、逆説的にリプリーとディッキーの空虚な生活を表している。「太陽がいっぱい」も観よう。
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