このレビューはネタバレを含みます
今さらながら、名作と聞き鑑賞。
この映画を見て、何を思うのか。
私は航空業界に身を置く者のため、感じることが他業種の方と比べると多いと思う。
まず一般的な観点から大企業とは国の縮尺の様なものであり、賄賂や横領などをする輩(今作ではキーワードの様に「魑魅魍魎」と呼ばれている)が存在している。
半官半民の様な企業では特にである。
今話題の「N○K」も当てはまりそうだと感じる。
当然そこに身を置く人間の中にも、正義感を持つ者もいる。
しかし、その正義感を口に出し、行動できる者は極小数になる。
今作はこの極少数側の人間が主役であり度重なる不当人事に挫けない、社員の希望=沈まぬ太陽と推測できる。
なぜ人間は魑魅魍魎と成り果てるのか、それは幸福の追求に際限がないからではないだろうかと私は思う。
労働組合も言ってしまえば、幸福追求のための請求であるが、大事な点は資本家と労働者の妥協点ということ。
鎌倉時代から日本は御恩と奉公といった形で支え合い、現代では労働と給与で結ばれている。
現代では過労死が問題とされるが、それは資本家側が労働者から自分の幸福追求のために労働を搾取しすぎているという点が問題だ。
資本主義という構造は貧富の格差が開く一方なのは言うまでもない。
結局のところ、人間というのは欲求が尽きることはなく、何とか自分が幸福になろうと躍起になる動物だということがわかる。
次に航空業界からの観点を述べる。
安全とはどういう状態から生まれるものなのか。
もちろん100%安全という状態はない。
しかし今作を見ていると、安全とは健全な人と安心できる環境から生まれるものではないかと感じた。
不満を持つ人や不健康な人が行う作業には、ミスを伴う可能性が高い。
だれか1人でも危ないと感じる状況で、声をあげれる環境であり、その行動が認められて評価されやっと安全な環境と呼べる。
この2つが合わさったとき、やっと環境的には安全と呼べる状況になるのではないだろうか。
もちろん答えなどない。
未だに国民航空モデルの王手航空会社が民事再生となったことは記憶に新しい。
あのとき航空業界は相当に厳しい状況であり、もう一方の王手航空会社も倒産寸前だったと関係者から聞いたことがある。
しかし、先に倒れたのは国民航空側だった。
察するにその理由は大義を掲げ膿を出し切ろうとした会長を、私情のみで排除した国会議員と悪徳幹部が排除したからなのであろう。
個人的には民事再生時に抜擢された某会長は、高齢社員を切り、不採算路線を切り、最もらしいフィロソフィーを作っただけであり正直なところ誰でも出来ることであると感じる。
国見会長のような、現場主義の人間がしっかり考えた施策とは大違いである。
民事再生時は負債も膨らんで、もう手遅れだったのかもしれないことは考慮する必要はある。
人件費を削ることは簡単であるが、失職する人が出ることはどう考えたのか。
不採算とはいえ、インフラの一部が地方路線を打ち切るのはどうなのだろうか。
それよりも問題は企業の財布に穴があり、たくさんあったグループ企業に横流ししていた人がいたということだと私は思う。
その差が一方の航空会社との間にあった。
結局この映画の中で1番楽な立ち回りをして、不自由ない生活をしているのは誰だったのか考えてみると、堂本社長だろう。
それが最も皮肉な点であると感じている。
人は要領が良く、頭が良くても、人間関係、タイミングや時代は選ぶことができない。
書いても書き切れないほどの感想を与えてくれた名作であると私は思う。
減点分は飛行機の操縦士とコックピットのやり取りがあまり調べてないなと感じたからです 笑