ブタブタ

蟹工船のブタブタのレビュー・感想・評価

蟹工船(2009年製作の映画)
3.0
蟹工船の持つ社会へのメッセージ性や作者の社会運動、それによる特高警察による拷問と非業の死。

蟹工船に描かれた劣悪な環境で奴隷労働に従事する若者達と派遣切りなど不安な労働条件で働く(当時の、そして今も)現代の若者がシンクロしている状況とか、そういった事にはSABU監督は全く興味なく見えてチャップリンのモダンタイムスから風刺を抜いた感じ、システムの部品になって悲惨な労働(知的労働含め)を強いられる様は未来世紀ブラジルの様でもあり、集団首吊りが船が揺れて失敗するくだりはドリフのコントの様。

日本帝国とソ連のカニ漁による代理戦争。
時代背景もはっきりせず、いつの時代の話しなのか敢えて暈した様な美術デザイン。

漁夫たちの着る番号がふられたスーツはレトロSFの戦闘服みたいでカッコ良いですし、歯車とベルトコンベア、人間がまるで機械の奴隷となって黙々と働きやがて人間が機械に融合されていくが如く自らの意思も感情も失っていき、後は壊れたら別の部品に取って代わられる。
人間と機械の奇妙な一体化はスチームパンクかバイオメカニクスか。

ここまで原作の持つメッセージ性を無視(してる様に見えました)してるのですからいっそもっと出鱈目に、途中からどう見てもあの時代のものでは無い戦闘機や戦艦が出て来たり、あの若者達は実は全員レプリカントだったとか、ラストで捨てられた新庄(松田龍平)が復活=再起動するとか、舞台は地球ではなく火星で時代は西暦2020年(つまりブレードランナーと同じ)だったとか、そうすればコピーの「反撃」とはつまり「レプリカント軍団、人類に宣戦布告!」になる訳でそれくらい目茶苦茶やってもよかったと思いました。
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