inazuma

メランコリアのinazumaのレビュー・感想・評価

メランコリア(2011年製作の映画)
4.8
「ラース・フォン・トリアー レトロスペクティブ2023」…10作目🌎

あのラースフォントリアーが"地球滅亡"系SFを撮った!めちゃくちゃキツかった…

出てくる人たちほぼ全員が諦めムードなのが怖い。しかも後半になるにつれ登場人物が少なくなっていくのもまた怖い。死ぬとかでなく、単に出てこなくなるだけというのが、すごく寂寥感を漂わせていて黒沢清の映画を観てる感覚に近かったです。ジョンハート演じる父親の書き置きとか、「え…そんな感じでいなくなるの。。」って感じで地味にキツかった。黒沢作品『回路』で、生気の無いアナウンサーが行方不明者の氏名を棒読みでひたすら読み上げていく場面が思い出されました。いつの間にかみんな消え、ひっそりと死にむかっている。

でも何より怖いのが、逆に死を受け入れられず、平静を装うとするも、ひたすら恐怖に陥ること…
シャルロット・ゲンズブール演じるクレアはただひとり、死ぬことと、大切な人と会えなくなることに対し恐怖を抱く。
こっちの方がリアルで本当にキツい。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の刑務所シーンもキツかったですが、これをぐんと引き延ばした感じ。シャルロットの演技がリアルかつ壮絶で、「あぁ、所詮人間ってこうなるんだろうな…」とイヤーな気持ちになりました。。
…彼女が途中ゴルフカートで颯爽と現れるところはちょっと笑っちゃいましたが。(あれは笑いを狙ったのか?監督、あんた本当に意地悪やね…好きです)

キツかったですが、映画としてよくできてるしちゃんと楽しめます。
前半の披露宴シーンは敢えて長々とみせてるんだろうなと。上手いですね。
何気ない日常を長々と見せておいて、実はみんな近く訪れる死を覚悟していたことが後半にわかり、また披露宴のシーンを観返したくなる。(ウドキアにスカルスガルド親子、良い顔揃ってます)

サムライミ版『スパイダーマン』の印象しかなく、役柄的にもあまり良い印象がなかったキルスティン・ダンストですが、本作でイメージが一変。冒頭からの怒濤の絶望スローモーションで彼女の神秘的で美しい、あの鋭い目に吸い込まれそうになった。この人はショートカットが大変よく似合います(個人の感想)

ゴルフ場をフィーチャーした映画って意外とあんまりないような気がします。なんか新鮮でした。広大な緑の敷地に池(海)やバンカー(砂漠)がポツポツとある様は地球っぽい。



以外、ネタばれを含みます。










ラストカットが最悪すぎてキツすぎて、一生忘れられない作品になりそうです。
死を目前に泣き叫ぶシャルロット…
せめて最期は一緒にと、大切な家族である妹、息子と手を繋ぐが、メランコリアが衝突する瞬間、シャルロットはその手を離し頭を抱え、あまりの恐怖に体をバタつかせる。。最後の最後まで死に怯え続け、怯えたまま息絶えるというのは、もう後味悪いレベルではない。。大爆音とともに映画館が光に包まれて、、自分もその瞬間にはあれぐらい恐怖するんじゃないかという果てしない不安に駆られました。。
inazuma

inazuma