垂直落下式サミング

13日の金曜日・完結編の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

13日の金曜日・完結編(1984年製作の映画)
5.0
前作で、高校生やバイカーギャング達を殺したジェイソンの死体が回収される。が、死体安置所に運ばれた身体が突如動き出し、検視員と看護婦を殺害。蘇生したジェイソンはクリスタルレイクに戻り、キャンプ場に訪れているチャラい若者たちと、向かいのログハウスに住むジャーヴィス一家を脅かす。人気ホラーシリーズの第四作目。
個人的には、本作がシリーズのなかで最もウェルメイドな作風だと思う。シンプルで一本道な物語ながらも、様々な仕掛けで存分に観客を楽しませてくれる。
死体をぶん投げて窓を割ったり、死体を玄関に磔にしてバリケードを作るなど、人の亡骸を物として使う遊びが満載。その他演出は、ジェイソンのパワーと行為の即物性を感じさせる工夫に満ちている。
今回は第二作目の犠牲者を探しにきた近親者を登場させるなど、よりシリーズの連続性を意識させるためストーリーが重くなりがちだが、コンプライアンス的に安全圏にいるトミー少年の存在によって、あくまで安物ホラーの範疇に保たれている。寝室の窓から隣家に泊まっている色ボケたちが乳繰り合う様子をみて、布団をバシバシ叩いてはしゃぐ可愛らしさで観客に愛嬌を振り撒く。そんな年端もいかない少年が姉を助けるためにジェイソンに向かっていく勇姿は、胸を震わせるような感情に満ちているし、お姉ちゃんも負けじと二回からパンツ丸見えで泥のなかに落下し見事に受け身をとるなど、躍動するアクションに痺れるような興奮が満載。ジェイソンの頭部へトドメの一撃を降り下ろす形相など、今観てもじゅうぶんにショッキングだ。
ジェイソンのマスクは前作で入手した物をそのまま使用しているので、斧を振り下ろされた傷がそのまま。さらに素顔も大サービス。脳天に鉈をぶちこまれて死亡し、前のめりに倒れたことで、刺さった刃がさらに頭蓋に食い込むのは、特殊メイクのトム・サヴィーニによる見事な仕事。
今回、女体よりも素晴らしかったのは、ジャーヴィス一家の仲好しさ。ママとお姉ちゃんが弟を~サンドウィッチ!というムスコン&ブラコンつぷり。けしからんね、こんな家庭、実にけしからんよ。ひとまわり歳の離れた姉と未亡人の母、ふたりが弟を溺愛とか、こんなのは近親エロ同人の世界なんだからな。
タイトルが“完結編”となっているのは、おそらくジェイソンがついに人間としての死をむかえるのがこの映画(前作で死んでた気もするが)だということなのだろう。
本作では、まだ走って追いかけてくるし、息遣いにも多少の人間味があるが、度重なる死と再生を経たことにによって、続編で彼は「象徴の魔人」へと変貌してゆくことになる。