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アメリカ、家族のいる風景の一人旅のレビュー・感想・評価

アメリカ、家族のいる風景(2005年製作の映画)
5.0
ヴィム・ヴェンダース監督作。

ロードムービーの名作『パリ、テキサス』(84)でも共同脚本を手掛けた俳優のサム・シェパードが書き下ろしたシナリオをヴィム・ヴェンダース監督が再び映画化したロードムービーで、今回は脚本を手掛けたサム・シェパード自らが主演をこなしています。

人生に嫌気が差して映画の撮影現場から逃げ出した落ち目の俳優が、30年ぶりに再会した母親から自分に子どがいることを知らされ、まだ見ぬ家族を求めて西部の街を彷徨う姿を描いた“ロードムービー+人生&家族ドラマ”で、落ちぶれた映画俳優の旅路を描いた点で近作『ラスト・ムービースター』(17)を連想させます。

実の母親からも距離を置いて生きてきた孤独な初老俳優が、それまで存在すら知らなかった息子&娘との邂逅と衝突、父子の絆を通じて人生を再生させていく様子が静かな感動をもたらしてくれる作品で、アメリカ西部特有の乾いた空気感覚と風景美も見所となっています。

向う見ずに駆け抜けてきた結果空虚と化していた人生の、原点回帰と再起の旅を哀愁とユーモアを滲ませて映し出したヴィム・ヴェンダース監督作品で、主演のサム・シェパードが見せるいぶし銀の演技に加えて、ジェシカ・ラング、サラ・ポーリー、ガブリエル・マン、ティム・ロスら脇を固める新旧役者陣の好演も光っています。
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