しゆ

グリーンマイルのしゆのレビュー・感想・評価

グリーンマイル(1999年製作の映画)
4.2
『ショーシャンクの空に』『ミスト』のフランク・ダラボン監督と原作キングのタッグに、登場する作品は大抵面白いトム・ハンクス主演。
ミスタージングルスがネズミなのは刑務所内にいる数少ない小動物だったのと寿命が極端に短いという理由以外に(それだけなら虫なんかでもいい筈)、本来人間に嫌われてる醜いネズミが囚人たちや看守のみならず視聴者にも愛着を持たせる存在になっていくこと自体にも、明言はされてないもののキングの意図がなにかしら込められていそう。
幾度も死刑を執行してきた人間が長い間死ねない皮肉。ポール(=トム・ハンクス)から少しだけ仄めかされていた無実だから脱走を試みるのはどうかという展開は同じ刑務所モノのショーシャンクとの差別化を図るメタ的な問題以前に、そもそも本作が''希望''とか分かりやすくて明るいものを扱ったテーマ性じゃなくて、冤罪を受け入れて「毎日愛が利用されてたくさんの人が苦しんでいる。それを感じることに疲れてしまった」っていう優しい力と心の持ち主を電気椅子に送ってしまった贖罪って結末を強調していて、それを実直で共感しやすい主人公になすりつけて追いやるのが新鮮だった。エンディングにはやるせなさや後味の悪さも含まれてるから捉え様によっては(鬱とまでは言わないまでも)いわゆるトラウマ映画にもなり得たけど、それらが哀愁や未だにすべてを信じ難い非現実的さとともに一気に迫ってくるから鑑賞後は不快な気持ちになったって一言で収まらないのがこの作品の魅力のひとつ。
ここまで書いて思ったけど、キングの作品って方向性や題材はどうあれ結末にじっくりとした余韻をもたらすことが多いから自分は好きなんだなぁと再確認。
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