ゆうゆ

異人たちとの夏のゆうゆのレビュー・感想・評価

異人たちとの夏(1988年製作の映画)
3.7

逢う魔が時に立ち込めて消えてゆくすき焼きのにおいと 甘くないアイスクリームの冷たさ。
愛に乾いた中年男性が幼い頃に死別した両親とミステリアスな女性に出会う真夏の夜の夢。都会の喧騒に埋もれ 味気ない日常にさまよう孤独が迷い込んだ異界のトンネル、ノスタルジーな幻影と忘れかけていたぬくもりに包まれていく主人公の世にも奇妙な物語。
会いたくても会えないひととの再会、取り戻せないかけがえのない時間によって満たされていく空洞の心。その潤いによって開かれた隙間に忍び寄る あまい魔性の死のかおり。 いつでも笑顔で迎え入れてくれる両親との何気ない記憶 無償の愛の尊さは、歳を重ねて観るほどに深く胸に響いてきそうな気がする。片岡鶴太郎と秋吉久美子の両親のカラリとしてあたたかみのある存在感が抜群。おなじ目の高さの親子3人の異質な時間、息子の目に映る母の美しさには母親像以上の秘めた羨望も潜んでいる気がした。恋人役の名取裕子の謎めいた妖艶、あのむかし話的な展開も演出次第ではおお化けしそうな切なさがあって嫌いじゃなかった。

アンドリューヘイ監督リメイクではこの恋人役をポールメスカル!異国の現代版は一体どんな風にアップデートされているのかとても楽しみです。
ゆうゆ

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