にゃーめん

異人たちとの夏のにゃーめんのレビュー・感想・評価

異人たちとの夏(1988年製作の映画)
3.5
アンドリュー・ヘイ監督の「異人たち」が公開したので、予習として大林宣彦監督版「異人たちとの夏」(1988)を鑑賞。

主人公の原田(風間杜夫、若い!)は、40歳で結婚・離婚を経て中年に差し掛かり、人生に疲れたシナリオライターという設定。

仕事場にしている訳ありマンションと、実家のあった浅草の2カ所を行き来する構成で、マンションパートと、浅草パートの温度差に情緒がめちゃくちゃになった状態で迎えるラストのB級ホラー展開に驚愕。

マンションパートの訳あり美女のケイ(名取裕子)の伏線は無かった方がよかった気もするが、彼女のおかげで生きることへの渇望をまた得られたと思えば、結果的にはあっても良かったのかも。
(まるでサキュバスのような名取裕子の妖艶な芝居は、昭和の映画でしか観られない醍醐味)

浅草パートは、雷門をくぐってからのシーンがとてもノスタルジックで、自分の知っている今の浅草の風景とは違う街の雰囲気にすっかり没入してしまった。

公衆電話、プルタブ式の缶ビール、紙タバコの自販機、手焼きの煎餅屋等、浅草演芸ホール以外の光景は今は見られない懐かしさに溢れていた。

自分が成長した状態で若い頃の両親に会うという展開は、なぜこんなに胸が苦しくなるのだろう。(BTTFを彷彿とした)

父親(片岡鶴太郎)の東京下町のべらんめぇ口調が軽妙で、ビールで晩酌したり、キャッチボールをしたり花札を教わるシーンに胸がいっぱいになってしまった。

母親(秋吉久美子)の甘くないアイスクリーム🍨も、あの懐かしのデザインのデザート器で一緒に食べたいと思うほど。
実家に帰ると、常に何かを食べさせようとしてくる母親を思い出してしまい、時代が変わっても母親という生き物は同じなのだなと感慨深い。

クライマックスの今半のすき焼きのシーンでは感極まってしまい、ボロ泣きした。
こんなにも悲しいすき焼きのシーンはこの映画くらいではないだろうか。

親は子供が何歳になっても、子供のことを大切に思っていてくれていて、両親が自分を愛してくれていたように、自分の子にも等しく愛情を与えていくことの大切さを、なんともトリッキーな舞台設定で説いていく下りに唸った。

舞台が日本のお盆の時期であるという事もあり、ゾクゾクしつつもジンワリとさせる『世にも奇妙な物語』テイストの話が生きたと思うので、これをイギリスの監督が再映画化すると一体どうなるのか。
イギリス版の出来が非常に気になる。

追記:YMOの故高橋 幸宏さんがチョイ役で出ておりびっくり。トレードマークの帽子を被り直すシーンにクスリとしてしまった。
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