まぐろさばお

単騎、千里を走る。のまぐろさばおのネタバレレビュー・内容・結末

単騎、千里を走る。(2005年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

基本形はよくありがちな親子のすれ違い、世代間の価値観の違いのドラマに過ぎないのだが、そこに三国志が絡んでくるという割と突拍子もない物語。

チャンイーモウは過去には文革周辺の、清朝末期の寒村の人々と動乱の中で古い因習が廃されていくノスタルジーや、古い因習の中のリアルな生活感情や悔しさを誰よりも鮮やかに生々しく描いてきたが、今度は中国の歴史をかなり遡っていっきに三国時代まで戻る。

まるで三国時代に描かれる義侠心のごとく、高倉健演じる高田という人物は論理でなく義理人情を押し通す。

今の感覚から行くと古臭いというか、一度お願いして行政に断られても、真心を込めて通じない日本語できちんとお願いしなおすとか、かなり時代錯誤な昭和な感じを感じるのだが、その辺がまさに近代や現代には失われてしまった義の心というようなものをこの日本人を通じて表現しようとしているのだろう。

人間ドラマとしては色々と破綻があって、そもそも仮面劇を撮影しに行くのも動機としては非現実的、ヤンヤンを連れていくのも頼まれたわけでもなかったりと、実は庶民的なドラマの皮をかぶっているが家庭ドラマではなく、人間の誠意・真心・義理人情のような抽象的な世界を描こうとしているように思う。

勝手知ったるキャスト・スタッフではないので多少ギクシャクしている部分はあると思うが、描こうとしているテーマは独特でチャンイーモウらしい深みのある映画になっていると思われる。