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恐怖のメロディの教授のレビュー・感想・評価

恐怖のメロディ(1971年製作の映画)
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クリント・イーストウッドのデビュー作。
当時にはその言葉すらなかった「ストーカーもの」のワンアイデアでのサスペンス・スリラー。

プレイボーイの主人公デイブ(クリント・イーストウッド)の「一夜限り」の火遊びを発端にしてエイドリアン・ライン監督の「危険な情事」と同じく、とにかく大変な目に遭うという物語。

このイブリン(ジェシカ・ウォルター)のキャラクター造形がとにかくわかりやすい。心理も行動原理も、とにかくシンプルで、一直線に「おっかない」のが逆に快感を覚えるほどに面白い。

今時、言葉を選ばないといけないような男性性を衒いもなく発揮しているデイブの、困った人としての振る舞いもシリアスなトーンの中でマヌケな感じにちゃんと見えていて古びない面白さがある。
「一夜限り」という言葉から、なんだかんだと押し切られ、ズルズルと関係を続けてしまうような緩さもシビアに男を描いている。

無骨ではあっても、二枚目を演じているイーストウッドがかなり初期の段階から「この人ヤバいかも」という「嫌な予感」を感じる表情や描写には説得力もあり、初監督時点でも演出がしっかりと見て取れる。

加えて、エロール・ガーナーの「ミスティ」やラジオ放送をうまく使った演出法や、妙なライヴ感と、監督として映しておきたいという欲望が抑えられない感じの「モントレー・ジャズ・フェスティバル」のライヴシーンなどの時代性など、観るべきところは豊富にあったりする。

将来「巨匠」と持ち上げられる処女作として、興味深さは満載でもあるし、当然ながら荒っぽい映画ではありながらも、面白く感じられる「クリント・イーストウッド」のブランド力はとにかく凄い。
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