「白雪姫」の新たな解釈として登場した本作は、予想を裏切るコメディセンスとシュールな展開で観客を楽しませる一風変わった実写化作品。
気品と可憐さと茶目っ気を兼ね備えたリリー・コリンズが白雪姫を、カリスマ的な存在感でスクリーンを支配しながらもコメディ役もこなせるジュリア・ロバーツが悪の女王を、そして堂々たる風貌なのに少々お間抜け役なアーミー・ハマーが王子を演じるという豪華布陣となっている。
撮影セットや視覚効果には確かにB級感漂う場面も散見されるが、そこを見事に補完しているのが世界的衣装デザイナー石岡瑛子氏の手がけた衣装だ。彼女の創り出す鮮やかで幻想的な衣装の数々は、各キャラクターの個性を際立たせながら、画面全体に魔法のような彩りを添えている。
本作におけるキャスティングの注目すべき点として、小人たちの役には実際に小人症の俳優陣が起用されており、近年『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』でのヒュー・グラント小人化CGが巻き起こしたような論争とは一線を画している。
物語の脚色も大胆で、原作のイメージを覆すように小人たちが森の追い剥ぎ集団として描かれたり、典型的な白馬の王子様像を破壊するかのように、王子が何度も滑稽な状況で半裸にされるといったユーモラスなツイストが散りばめられた。
特筆すべきは女王の横暴さが極端に高められている点で、その極端な演出が奇妙な愉快さを生み出している。しかし本作は単なるパロディではなく、ディズニーアニメ版では省略されていた女王と白雪姫の複雑な関係性に焦点を当てた丁寧なストーリーテリングも展開している。
そして、ターセム・シン監督ならではの感性が光る予想外のエンディングには思わず笑みがこぼれた。
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