藻尾井逞育

探偵はBARにいるの藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

探偵はBARにいる(2011年製作の映画)
4.0
「感情に流されれば寿命を縮める。俺が貫いてきた主義だが、主義に凝り固まればソヴィエトも地図から消える」
「俺たちは、生まれる環境も自分の体も脳みそさえ選べず、いきなり生まれさせられ、人生の責任を押しつけられる。それで楽しくやれるヤツはいいが、ついていけない人間はどうすればいい?」
「たぶん霧島に俺も惚れたんだな。一緒に飲んだら最高に楽しいヤツだったと思うよ」

札幌の歓楽街ススキノで活躍する探偵のもとに、コンドウキョウコと名乗るナゾの女から「ある男に会い、彼にひとつ質問してほしい」という依頼が舞い込む。簡単な依頼のはずが、探偵はその直後に命を狙われ、不可解な事件に巻き込まれていく。

札幌ススキノ、地元密着型のハードボイルド、バディものです。主演の大泉洋さんが軽妙洒脱にコミカルな演技とシリアスな演技を同時に演じていることが、より映画を面白くしています。何よりも、決して完璧じゃない、人間味溢れるキャラクターが魅力的です。彼の語るボヤキも含めたモノローグがとてもカッコよく、思わず真似したくなります⁈またコンビを組む松田龍平さんの普段はボーっとして寝てばっかりなのに、いざとなったら滅法強いところもスカッとさせられます。必ず遅れて登場するのもお約束ですね。アクションシーンも素晴らしく、今はやりのワイヤーアクトやCGで処理するのではなく、昔ながらの血湧き肉躍る肉弾戦で、昔見た松田優作の探偵物語や角川映画が思い出されます。他にも、しっとりとしたミステリアスな魅力の小雪さん、男気を感じさせる西田敏行さん、突き抜けたワルの魅力の高嶋政伸さん、波岡一喜さん…と、魅力的な役柄にみなさんハマってますね。
話はハードボイルドらしく一人称"俺"の目線で進んでいきます。小説だとその世界に没入することができるでしょうが、映画だと視覚、聴覚に余計な情報が入ってしまい、話の展開に支障をきたすことがあると感じました。具体的には、探偵のもとにかかってくるナゾの電話は、どう聞いても◯◯さんの特徴のある声だとわかってしまいますが、謎の女として最後までひっぱります。なんで探偵はわからないのかなぁ、ひょっとしてポンコツ?なんて思っちゃいます⁈小説を映画化することの難しさをこの映画を観て改めて感じました。