うかりシネマ

マイマイ新子と千年の魔法のうかりシネマのネタバレレビュー・内容・結末

マイマイ新子と千年の魔法(2009年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

昭和30年、山口。マイマイ(つむじ)が二つある新子は、祖父から千年前にそこに都があったことを聞かされる。新子は田畑の中に千年の都を想像し、自身の同じくらいの年齢の“諾子”の姿を思い描く。

三幕構成をあえて破り、ラスト30分を終わるための助走ではなく最後までどう終わらせるのか分からないまま進めるのは、宮崎駿的。
牧歌的な雰囲気に反し、そこで描かれるのは人の死と失望、そして鎮魂。原作が自伝のためドラマ的でなく、人物にはドラマ性のないまま生々しい二面性が置かれる。

諾子のストーリーは最後まで現実世界と交わらないまま独立している。何の説明もなく、主人公の心境と同期せずに挿入されるのが独特で、全てを語らないがゆえに現実とどう結びつくのか観客に考えさせる。

前半は東京からの転校生・貴伊子との仲を深めるさまが描かれる。ウイスキーボンボンを食べてしまうシーンがとても佳い。
新子と貴伊子の関係性も、言外に語られている。二人の関係性を逆転させるのも、ドラマ的なサプライズがないからこそ沁み渡る。
丁寧な作画で描かれる魂が込められたキャラと象徴的なリフレインが、見ているだけで気持ちいい。