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フローズン・リバーのShinMakitaのレビュー・感想・評価

フローズン・リバー(2008年製作の映画)
3.6
☆リバー映画:アメリカ編



ニューヨーク州、最北部の町。カナダ国境と接するこの町は、カナダ側と繋がるモホーク族の保留地を擁している。保留地は完全自治地帯となっており、警察が介入できないことになっていた。
この町で貧しいトレーラーハウス暮らしをしている中年女性レイは、小学生の息子リッキーと、15歳の多感な少年TJを育てている。夫のトロイはギャンブル狂いのろくでなしだ。クリスマス直前のある朝、新しいトレーラーハウスを買うために溜めたカネを持って、トロイが失踪する。またもやギャンブルかと怒りながら、近所の「ビンゴ屋」を訪ねたレイ。そこでトロイの乗っていたダッジを発見するが、それを見知らぬモホーク族のデブが乗って行ってしまう。レイは後を追い、デブ女の家で詰問する。女の名はライラ。「ビンゴ屋」の従業員で、ダッジはバス停で拾ったものだと話す。トロイはクルマを捨て、長距離バスで家出したらしい。レイはダッジを取り返し帰宅しようとするが、となると、自分の乗って来たホンダを置いていくしかない。悩むレイに、ライラがある提案をする。クルマを高額で買ってくれそうな友人が、保留地のカナダ側に住んでいるという。レイはライラをダッジに乗せ、その友人のいるカナダ側へ向かう。国境検問所を通らず、<凍った川>を渡ることでカナダ側についたレイとライラ。慟哭のドラマはそこから始まって行く・・・





「フローズン・リバー」




凍てつく川の向こうは、法の向こう側。二人の母親は、家族のために、卑しき犯罪に手を染めていくのです。描かれるのは、二人の母性と友情。暗喩的な川のカットは美しくも暗く、瞼に焼き付きます。クライムドラマとしてのプロットはもちろん、テーマを深める幾つものエピソードの重ね方も秀逸。さらに、保留地で暮らすインディアンたちの実像や、思春期特有の葛藤(TJがトーチランプにこだわり、父トロイを愛しているけど憎んでいるという複雑な感情表現は最高!)も織り込んで、まさに・・・ 完璧。

こういう良質の映画を、アメリカもキチンと評価し(サンダンスグランプリ)、日本でも公開されたということは、映画ファンにとっては喜びですね。当時、今は亡きシネマライズで観て、2010年の私的ベスト映画に挙げてソフトも購入いたしました。
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