マヒロ

ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場のマヒロのレビュー・感想・評価

2.0
(2025.47)
古参の軍曹であるハイウェイ(クリント・イーストウッド)は、昔気質の男で日常生活でトラブルを起こし勾留されるなどやや素行に難ありの男だった。そんな中、古巣から現場に復帰するよう命じられたハイウェイだったが、配属された小隊は士官学校上がりの実践経験の無い若手の上官と、舐め切った態度のチャラい兵士しかおらず……というお話。

戦争を生き抜いてきた兵士が、最近の弛んだ若者やキャリア組を昔ながらのやり方で叩き直しちゃるという、イーストウッドのマッチョ思想がかなり色濃く現れた作品。70〜80年代のイーストウッド作品は同じような傾向のものが多いが、今作はその極致のような感じがした。この前にそういう考えを内省するような『センチメンタル・アドベンチャー』なんかがあったりするので、その方向に固執しているというわけではないんだろうけど。

正直その思想には着いていけないが、それはそれで置いておくとしても映画としてもイマイチ締まらないところがある。大半は若者をしばき倒す訓練シーンとハイウェイが離婚し疎遠になっていた元妻に会いにいきヨリを戻そうとウジウジしている場面だが、これがいつまで経っても面白くならず、ただ延々とオヤジの愚痴を聞いているようでウンザリしてくる。

ラスト付近でようやく実戦パートになるが、ここも敵兵が素人みたいにフラフラしているだけの何の手応えもない戦闘で、せっかく鍛え上げた兵士たちがどう成長したのかが全く見えてこないのが厳しいところ。イーストウッドってこんなに戦争を撮るのが下手なのかとビックリしてしまった。後年の『硫黄島からの手紙』とか『アメリカン・スナイパー』ではそんなことなかったと思うんだけど、いかんせん相当前に観たきりなので覚えていない……。前半訓練、後半実戦という流れは『フルメタル・ジャケット』を彷彿とさせるが、あちらほどエッジの効いた描写もなく、ただただ残念だった。
ついでに、何故かイーストウッドが終始喉を締められてるみたいな、いつものしゃがれ声とも違う奇妙な喋り方の演技をしているのが気になってしょうがなかった。他の作品ではそんなこと思わなかったので、特別にこういう演技をしているということだと思うんだけど、あまり上手くは行っていなかったような。

イーストウッド作品はソフトしか出ていない『愛のそよ風』以外はほとんどU-NEXTで観られるんだけど、何故か今作と『アイガー・サンクション』だけが無くて、両作アマプラのレンタルで観た。実際は権利の問題とかなんとかで配信制限されてるんだろうけど、2作ともどうも他の監督作品と比べても凡作な感じがするので、もしかしてハブられてるのでは……と邪推してしまった。
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