Kumonohate

あなたと私の合言葉 さようなら、今日はのKumonohateのレビュー・感想・評価

3.8
会社勤めの主人公(若尾文子)は、父(佐分利信)と妹(野添ひとみ)と3人暮らし。許嫁(菅原謙二)との婚約を解消した上で、家族同然の親友(京マチ子)に譲ってしまう。想いを寄せてくる学生(川口浩)には見向きもせず、妹との結婚を仲立ちする。自分が結婚したら誰が父親の面倒をみる? 娘は父からの、父は娘からの、それぞれの自立の物語。市川崑監督作品。1959年。

テーマは明らかに小津。だが、前半は、スタイリッシュな映像に抑揚の無いロボット口調の台詞が速いテンポで連打される市川監督ならではのモダニズム。後半は、一転して、父と娘の対話を真正面からのバストショットで切り返す、小津作品への露骨なオマージュ。全体を通してみると、“小気味の良い小津” とでも言うべき後味。同郷でもあるし、後に「晩春」(1949年)をリメイク(「娘の結婚」)をしているくらいだから、受けた影響は大きかったのだろう。

とはいえ、小津作品とて「嫁ぐ日まで」(監督:島津保次郎 1940年)等からの影響が無いとは言い切れまい。今も昔も “父と娘” は普遍的なテーマだが、家族のカタマリが今以上に意識されていた当時は、よりジェネラルな関心事だったのかもしれない。
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