rage30

クライング・フィストのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

クライング・フィスト(2005年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

借金まみれの中年男と少年院上がりの不良青年が、ボクシングで戦う話。

主人公は世代の違う2人の男。
それぞれに問題を抱えており、ドン底な人生を歩んでいるのですが、世代が違うので見ている方も、どちらかには感情移入し易い事でしょう。

中年男を演じるチェ・ミンシクは相変わらずの演技力で、安心して見れましたし、個人的には不良青年を演じるリュ・スンボムが印象に残りました。
喧嘩して相手の耳を噛み千切るシーンとか、“狂犬”と呼びたくなるくらい野性味があって、ゾクッとするものがありましたね。

映画は、そんな2人の人生を寄り添う様に描いていきます。
普通のボクシング映画なら、1人の主人公に感情移入させたり、敵側を悪役にしたりするものですが、本作はどちらも主人公であり、そこに善悪はありません。

こうなると、どちらにも勝って欲しいと思うし、どっちも負けて欲しくないなと思ってしまう。
ある種の矛盾を抱えながら2人の対決を見る事になるので、そこに高揚感の様なものは感じませんでした。
むしろ、この2人が争う事に悲劇や哀愁の様なものを感じたかな。

でも、映画はそこで終わらず、ボクシングの試合を超えた、人生の戦いを照射していく。
このリングに上がるまでに2人が背負ってきたもの、この戦いにかける意地や覚悟や根性…。
そういったものが最終ラウンドには込められていて、勝ち負けはともかく両者に敬意を抱かずにはいられなかったし、賛美歌の様な音楽が流れていたのには、2人の人生を讃える意味があったのでしょう。

最終的に試合の勝敗は決まるものの、両者を肯定して終えるのは監督の慈愛を感じたし、試合に負けても人生が負けたわけじゃない…という事を描きたかったのかもしれません。
スポーツ、特に格闘技においては勝ち負けは付き物ですが、それだけが全てではないし、それはスポーツ選手のみならず、どんな職種でも同じ事が言えると思うのです。
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