睡眠のサイクルは90分周期で切り替わると聞いたことがある。眠りが浅い90分と眠りが深い90分を交互に繰り返しながら、眠りが浅いサイクルのときに夢を見る、というやつ。『パプリカ』はまさにその、浅い眠りそのものではないか。本編ちょうど、90分間。
虚構世界のシアターには『パーフェクト・ブルー』から連なる監督自身の過去の作品の看板が並ぶ。これを最後に、現実世界において新たな看板が追加される機会が永遠に失われてしまったことは、残念でならない。
しかしまあ、実写よりもアニメーションのほうが表現の自由度が高いとはいえ、つかみどころのなく説明のできない「夢の世界」をここまで精巧に具現化されちゃったら釘付けである。映像作家・今敏渾身の今作からコンコンと湧き出る想像力と創造力には、畏れ入る。あと、平沢進。