デニロ

悪魔の往く町のデニロのネタバレレビュー・内容・結末

悪魔の往く町(1947年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

1947年製作。原作ウィリアム・リンゼイ・グレシャム、脚本ジュールス・ファースマン、監督エドマンド・グールディング。シネマヴェーラ渋谷のチラシに載っていた写真が猟奇的で、なおもタイロン・パワーが暗闇へと転落していく詐欺師を演じたと書いてあったので興味津々で出かけます。

タイロン・パワーをめぐる三人の女。終盤に登場する心理カウンセラーヘレン・ウォーカーが謎の女。野望に燃える若きタイロンパワーが旅回りのカーニバルで知り合った他のふたりジョーン・ブロンデル、コーリン・グレイは、彼の踏み台とされるのだが、そのふたりとは異質な人物だ。タイロン・パワーに自分の顧客情報を提供し、顧客の望む奇跡を作り上げ15万ドル巻き上げる。ある時その悪事は崩壊しタイロン・パワーは窮地に落ち込み、彼女に預けた金を回収し逃走を図るべく駆け込む。彼は金を手にしタクシーに乗り込むが、封筒を確認するとなんと1ドル札150枚。取って返すが彼女のメイドに拳銃を向けられた挙句に、彼女は、封筒はそのまま渡した、わたしは関係ないと嘯く。サイレンの音。警察を呼んだのか/と問われると、/何も聞こえないわ。/

このシーンは本作の中でも突き抜けて恐ろしい。タイロン・パワーはその音に心底おののき、観客たるわたしにの耳にも重なり合うむせぶような音が響く。ヘレン・ウォーカーは何も聞こえない。嘘か真か。彼女はうろたえる彼を気遣いすら見せる。追い込まれたタイロン・パワーの幻聴なのか。わたしの中の夢魔が目覚める。

他にも、子供のころの記憶の語り、タロットの死神カード出現の繰り返しで、シネマヴェーラのチラシに記載されているタイロンパワーが暗闇に転落していく過程を描いている。そんなタイロン・パワーなのだが昔の仲間ジョーン・ブロンデルには負い目を感じていたり、妻となったコーリン・グレイには優しく接したりもする。深く計略をかんがえ立てているでもなくあるがままにキャンバスに欲望という絵具を塗るだけの男。いつしかタロット占いの通り成功者から転落していく姿はいつか見たシェイクスピアの先人の姿と重なる。

それにしてもカーニバルに付き物というギークに配役される転落者は悲しい。

シネマヴェーラ渋谷 特集 恐ろしい映画 にて
デニロ

デニロ