Violet

母なる証明のVioletのネタバレレビュー・内容・結末

母なる証明(2009年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

子供のためならなんだってする。
例えそれが殺人であろうとも。
母は強し。日本でもそう言われるけれど、やはりこれは世界共通の考え方なのだろう。
母親の子供への愛には、限度がない。
この揺るがぬ事実を、最も悲しく最も恐ろしい視点から描いた作品だ。

本作の도준(トジュン)そしてその母親。
言わずもがな極めて難しい役柄だったと思うが、それを見事に演じ切った원빈(ウォンビン)と김혜자(キムヘジャ)には拍手を送りたい。
廃品回収の老人を殺害し、家に火を放った際に母親が忘れた「鍼道具」。それをトジュンが発見し母親に渡すシーンは言葉にならない気持ちになったし、そのシーンのキムヘジャの表情は必見。
진태(ジンテ)は犯人が屋上に死体を運んだ理由を「街中の人にこの女を殺したのは俺だと見せつけるため」と推測したが、トジュンは「血を流しているから早く病院に連れていってもらうため」に町中から見える屋上に運んだのだという事実がさらに切なく、胸が苦しくなった。

“엄마 없어?(お母さんはいないの?)”
トジュンの罪を被ることになってしまった종팔(ジョンパル)に母親がこう問いかけ嗚咽するシーンも印象的。
トジュンには母親がいたけれど、ジョンパルには彼の罪を晴らそうと奮闘する母親がいないのだ。ジョンパルこそが本当に冤罪で捕まってしまったのにもかかわらず。

作品としては超一級品。見るものを飽きさせない脚本、カメラワーク、キャスティング。ポンジュノ監督の思いもよらないところからガツーンと殴られるような脚本は本当にすごすぎる。あとこの見終わった後の独特のモヤモヤする気持ち。正直、この作品が好きかと聞かれると、あまり好きではないかもしれない。けれど、見て良かったなと思わざるを得ない作品だったことは間違いない。

この作品の母親は、映画”Searching”を彷彿とさせる...。

▼이 정은(イ・ジョンウン)
この女優は本当に見る作品見る作品出ていると言っても過言ではない。笑 わたしが見た中でも、기생충(パラサイト)、椿の花咲く頃(동백꽃 필 무렵)、ハッピーログイン(좋아해줘)に出てた。めちゃくちゃ好き。

▼参考
https://pandafujin.com/movie-mother-spoiler/
韓国でのポンジュノ監督のインタビューについて書いてある記事でとても興味深い内容でした。この作品のテーマやサブテキスト、撮影法や映像の奥深さに舌を巻きました。
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