原題『Paradise Now』 (2005)
監督 : ハニ・アブ・アサド
脚本 : ハニ・アブ・アサド、ベロ・ベイアー
撮影 : アントワーヌ・エベルレ
編集:サンダー・ボス
出演 : カイス・ナーシェフ、アリ・スリマン、ルブナ・アザバル、他
イスラエル占領地ナブルスで暮らす2人のパレスチナ人青年が自爆テロへ向かうまでの48時間の葛藤や友情を描いたヒューマンドラマ映画。
名作。
「パレスチナ問題」映画。
パレスチナ人から見た「パレスチナ問題」と「テロリズム」をテーマに、パレスチナの若者が直面している八方塞がりの絶望感、心の尊厳を踏みにじるイスラエルへの怒り、暴力で抵抗する側と非暴力の解決を望む側のパレスチナ内の対立を描いた作品で、「パレスチナ問題」を扱ったいろいろと考えさせられる一作だと思います。
ハーレドとスーハによる車内での会話が全てを語っている場面であり、
自爆テロ前夜に食事するシーンがダヴィンチ「最後の晩餐」と同構図で、皮肉たっぶりな秀逸な演出でした。
テロは決して容認出来ないが、今パレスチナ自治区で起こっているイスラエルのガザへの攻撃などを見るにつけ、今、また改めて観るべき作品かもしれません。
「この映画で描きたかったのは、信仰により受け入れてしまう運命というものです。Destiny(運命)とFate(信仰)は似ている単語ですが、destinyは「運命を自分で変えていくこと」、Fateは「そのまま受け入れてしまうこと」を表します。サイードとハーレドの場合、最初は組織の人間に指名されそのまま受け入れましたが、最後は結果的にそれぞれ自分で決断して行動しました。例えばサイードは、ハーレドとはぐれて単身イスラエルに向かった時、バスを吹き飛ばすチャンスがあったのにそうしなかった。子供たちを道連れにできなかったのです。でも、最後のシーン、バスは兵士でいっぱいです。兵士は自分と同一視できたのです。ここに、彼の意志と主義があります。全ての人間にとって最後に死ぬということは変えることのできない運命ですが、しかしその過程は人それぞれで変えることができるのです。」
- ハニ・アブ・アサド -