半兵衛

ジャン・ルノワールの小間使の日記の半兵衛のレビュー・感想・評価

3.5
ジャン・ルノワールらしい自由な演出は健在でヒロインのポーレット・ゴダードが小間使=メイドという家主に使われる身分ながらも我が道を往く女性像に仕上がっているのが痛快なので楽しいのだけれど、彼女に下心のある執事フランシス・レデラーの演技が不気味なためそこだけ作品の雰囲気が変化するので困惑し、更には後半になると何故かサスペンスへと展開が変化していきそこからまさかのハッピーエンドへ到達しこの作品は何を言いたいのかよくわからぬまま映画が終わることに。強いてあげればアメリカ映画でよく終わりかたに近く、そういう意味ではルノワールがアメリカに屈してしまったとも言える。

隣人と主人のクレイジーで笑えるやり取りからフリーダムな祭りの場面がこの映画のピークだったな、そこからはどんどんテーマであるはずの小間使が離れて映画のテンションも下がっているような印象が。

それにしても脚本や老け役での出演のみならず製作まで担当していたバージェス・メレディス(ロッキーのトレーナー)の才人っぷりには目を見張るものがある、それだけルノワール監督に惚れ込んでいたということなんだろうけど。

暴力シーンが同年代の作品に比べて結構リアルでガチな雰囲気なのも見所、こういう部分は弟分のベッケルやブレッソンにも受け継がれていくことに。
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