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遊星からの物体Xのmarohideのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
4.5
 さして数を観ているわけではないが、今まで自分が観てきたこの手のモンスター・パニックホラーの中ではダントツでクリーチャーの造形が良い。
 大抵の映画は怪物の姿がハッキリと見えてしまった時点でワントーン熱が落ち着いてしまうのが常であったが、この映画のThe Thingは画面いっぱいに現れた瞬間にむしろ恐ろしさ、悍ましさを増幅させることに成功している。化け物として正しい仕事ぶりである。
 怪物が現れるまでの引きも上手い。犬の影だけが壁にうつるシーンなど特に。

 個人的に嬉しかったのは「触手が怖い」という感覚を初めて理解出来た事だ。
 西洋人が触手に対して根源的な強い恐怖を覚えているというのはラブクラフト作品を読んだときや「ミスト」を観たときに感じていたことだが、タコイカが身近な存在である海洋民族の自分にはどうもこの感覚が体感的に理解できたことがなく、文化的な隔たりを感じていた。
 この映画の触手はちゃんと気持ち悪いしちゃんと怖い。それが嬉しい。自分には一生わからない感覚だと思っていたから。
 対話とかが出来ないのも良い。あんなもん仲良くなれるわけがないからね。

 CoCのルールブックにちょこっと紹介されていたので観てみた本作であったが、確かにCoC的な文脈で参考になる点が多かった。魅力的で孤立した舞台。少しずつ明らかになる敵の習性とその対策。探索者の精神状態や言動についてなど。
 特に研究者のキャラクターが、その高いINTがかえって仇となり恐ろしい真実に到達、SANが減少し狂気を発症、という流れはお手本のようで非常に勉強になった。

 火炎放射器を多用していたので少し期待したものの本を焼くシーンはなかった。やや残念だが炎の中でのラストシーンは美しかった。
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