ヤングノルン

遊星からの物体Xのヤングノルンのネタバレレビュー・内容・結末

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

人間不信を体現させた傑作映画。
日常で体裁的に言われる強調性だの思いやりは、残念ながら究極的には必要なく、皆が個人として自分のためにしか生きれない。そういった秀逸なテーマ。例えば、あのときに追われているシベリアンハスキーを助けていなかったら、あるいは、乗っとられているのが分かり、かつての仲間が変貌していくのに屈せず早く焼いていればなど。半端は優しさ、愛しさは事一つ生きるためには不要であり、狂人だと言われようが個人を貫くしかない。だから命が脅かされれば仲間だろうと殺す。作中のクリーチャーの正体、それは我々が求める強調性の先、つまりは画一化の権化なのかもしれない。

美術が優れているのは言わずもだが、物体と人間の区分けも大変芸が成されており、目の光などは映像をちゃんと見ていないと気づかないかもしれない。

そしてラスト。炎上する観測基地を背に男二人は見つめあう(監視)するしかなく、疑心暗鬼で物語は終わる。今はネットが自らの意見の場になり、相手の顔も知らないのに安易に信じ、対面の人との関わりは益々軽薄になる。それはある種、物体となにもかわらない。
表面上、表層的な向き合い方をする人々へ警鈴。
チープなど、クリーチャーのデザインがどうとか言わずに生々しいテーマを持った本作を見た上で改めて評価を。