暮色涼風

挑戦の暮色涼風のレビュー・感想・評価

挑戦(1963年製作の映画)
3.6
一見、ひたすら厳しいバレーの練習風景を記録しただけに思われるが、"極限への挑戦"を見せるために、実は様々な演出が為されている。

背景を真っ暗にして被写体だけを強めにライティングしたシーンや、選手の着地した靴の裏が見えるような真下からのアングルで撮影したショットもあり、始終音楽で緊迫感を出そうともしている。

そのように、この映画はまるで劇映画のようなセッティングをしている。
それは、挑戦する選手たちの"極限の美"を脚色するためである。

そういった事実へ脚色をしたものは、ドキュメンタリーではないと考える観客もいるが、ドキュメンタリーもまたフィクションである。
ありのままの事実を伝えるのはニュースであり、ドキュメンタリーとは、世界、自分、他者、人間、美などを作り手(表現者)がどう見ているか、その視点、世界観、美意識を表現する方法である。そこがニュースとドキュメンタリーの違いだ。
「ドキュメンタリーは客観的に作るべきだ」というのは、「表現するな」と言っているようなものなのだと考えさせられた。
暮色涼風

暮色涼風