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ロンゲスト・ヤードのLCのレビュー・感想・評価

ロンゲスト・ヤード(2005年製作の映画)
3.6
面白かった。

囚人と看守によるフットボールの試合が描かれるけれど、あからさまに怖かったり痛かったりする場面はなく、とても見やすい。
試合も見やすい。素敵。

知り合いが話してくれたことのある人が出ていてびっくりもした。
新日本プロレスの試合に出たこともあり、ベルト戴冠も果たしている他、プロレス以外にも K1 や総合格闘技といった方面で活躍し、日本のお茶の間でも親しまれた人であるらしい。ボブ・サップの名で。
わしは初めましてだと思う(何せ人の顔覚えるの苦手なので自信はない)けれど、身長もあるし筋肉も大きいしで、なるほど納得の選手経歴。アメフトもなんのそのだね。大学にはアメフトの特待生として入ったようだし。

作中印象的だったのは、看守に挑発された本好きさんが、耐え抜いたこと。
その刑務所の中は「喧嘩売られたら買うのが男」みたいな価値観の人が多そうで、たぶん看守たちも、それを逆手に取る気満々だったように思う。
執拗に侮蔑して挑発して、それでも乗ってこない相手に、とうとう手を出すことなく去って行った。
そんな光景を見ていた者が、やり返さなかった囚人仲間に向けた視線に、嘲の色はなかった。耐え抜いたその覚悟を、しっかりと受け取っていた。

看守や刑務所長といった人たちが、その立場や権力を用いて主人公たちを脅かす。刑期が延びるよ。罪を被せることもできるよ。よっよっ。
主人公も、他の囚人たちも、どのように立ち向かい、跳ね除けていくのか。
彼らひとりひとりに刑務所に来る経緯があるわけで、服役していて人間扱いされない場面が多い中、ボールを抱えて目指す先には「プライド」があったんだろうかと感じる。人間としての尊厳を失わない気持ち。
そこは確かに、最も遠くにあるゴール(The longest yard)だったのかもしれない。
アメフトは、確か10ヤード毎にフィールド上に線が引かれているんだっけ。フィールド中央からエンドゾーン(フィールドの端、ゴール)に近付く程、30ヤード、20ヤードと数字が減っていく。
主人公も、地道に己のエンドゾーンへ歩みを進めて行ったんだろうかな。線をひとつひとつ越えて行った。

囚人仲間の棺に次々とアイテムを置く場面は、どうしても胸に来るものがある。
タバコも、バーガーも、そこでは外より手に入りにくい高価なものな筈で、そういったものをどれだけ気前良く捧げたところで、命は決して帰ってこない。
帰ってこない命の為にも、好きなようにされ続けるわけにはいかなかったよね。
終身刑になろうが、譲れないものの為に闘えるか否か。相当な覚悟だと容易に想像できる。

刑務所の華である面々のチアがとても好き。ちゃんと振り付けとか考えて、応援練習バッチリな感じ。衣装もバッチリ。
刑期を終えたら、みんなでフットボールの試合見に行って、ビールの1杯2杯でも飲めたらいいね。
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