GyG

エル・スールのGyGのレビュー・感想・評価

エル・スール(1982年製作の映画)
4.5
・全体の構造
本作は父親の存在が大きなファクターになっており、幼い頃のエストレーリア、分別がついた頃のエストレーリアが、その折々に父と交わしたことばや一緒にいた光景などを、大人になったエストレーリアが昔を振り返る形で物語りを紡いでいく構造になっている。

・ファクターの中身、ナラティヴ性、ストーリー性
大地と水という自然に対して親密な会話ができる父親、秘匿された過去があるため妻子や社会に対して距離をおく寡黙な父親、この2点が主要なファクターになっている。
なお、前作「ミツバチのささやき」では自然のメタファーを蜜蜂とキノコに置換すれば、両作とも同じ構造になっていることに気づく。
ただし語り手のいない前作では、見る側が自ら物語りを作り出さなければならず、それはしばしば視点がブレたりするため抽象的映画になりやすいが、本作ではエストレーリヤがオフスクリーンでナラティヴの行間をつないでいくため、見る側における起承転結の異同はそうそうおきない。
つまり、前作がミスティックな映画にみえ、本作は一見分かりやすい映画にみえるのは、主人公が話者になるかならないかよる部分もある。

・ストーリーレビューbyナレーションベース
パパがわからないわ
わたしの背はあなたの半分だったから、いつも下からあなたの顔をみあげていた
かなしそうな目が不思議だった
それで時々あなたが見つめている方角を背伸びして眺めることがあった

ある日あなたは死んだ
そう聞かされたときもう泣きはしなかった
女として生まれつく星の宿りを告げてくれた振り子、それを置いて出たとき、あなたの決意と辿り道を知り、道行きの実りを祈ったのだから

エル・スール 
そこであなたは安らぎを得たのだろうか
もしひどい話しが待っていたとしても
わたしはそこへ行ってみようと思う
わたしはあなたの娘だったから
GyG

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