このレビューはネタバレを含みます
父親の秘密を知ってしまう少女の話。
仲も良く、子供にとっては理想に思えた父親。
しかし、彼には祖父と仲違いした過去や、元恋人への未練が明らかになると。
冒頭から陰影の濃い画作りや、暗闇を使った演出が印象的だったのだけど、光と闇を意識した撮影は、父親の光と闇を描くという本作のテーマを暗示していたのだろう。
父と娘という関係性は、同監督の前作『ミツバチのささやき』を想起させるが、身近な人間の死という現実がある種の通過儀礼として描かれるのも共通する部分。
ラストで主人公が寝込み、目覚めるところで終わるのも同じで、主人公の成長や再生を意味しているのかもしれない。
本来なら、ここから更に後半が用意されていたらしいが、プロデューサーの判断によってカットされたとの事。
前述した様に『ミツバチのささやき』と似通っているし、『ミツバチのささやき』のその先を見たかった…という意味では残念である。
もしも、この映画が完成していれば、ビクトル・エリセが40年近く新作を撮れなくなる未来も避けられたのだろうか…。
ただ、個人的には、そこまで未完の終わりという感じはしなかったし、未来(エル・スール)に向かって終えるラストも、これはこれで解放感があって良かった。
『ミツバチのささやき』よりも物語性があり、それに伴って、主人公の成長も明確に感じられる。
『ミツバチのささやき』がイマイチだったという人には、本作の方が刺さる人もいる事だろう。