さすらいの用心棒

禁じられた遊びのさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

禁じられた遊び(1952年製作の映画)
3.8
戦争で孤児になった五歳の少女が偶然出会った少年とともに、死んだ愛犬のために十字架を盗んでお墓をつくるという遊びをはじめる───ヴェネチア金獅子賞受賞。

『太陽がいっぱい』の巨匠ルネ・クレマン監督。
数々の映画賞を受賞し、反戦映画として知られているみたいだけど、「反戦」という言葉が自分にはいまいちピンと来ない。どう考えてもこれは、戦争ではなく「子どもの痛み」について描いている。
大人が始めた戦争で両親が殺される。十字架を盗むというささやかな遊戯も、宗教にうるさい大人たちが許してくれない。経済的困難という大人の都合で孤児院に送られる。いつの世も大人の勝手で理不尽にさらされる子どもの姿が、フィルムに描かれている。
常にお隣と喧嘩をして「隣人愛」など微塵もない。お祈りを唱えられる者が少年以外にいないなど、少年の一家は決して信仰心が深いわけではない。なのに宗教の形式にこだわり、十字架を盗んだ二人をひどく責める。親父は息子の約束を平気で破り、子どもたちの言い分に耳を貸す者もいない。建前を気にして、子どもを裏切る。何のことはない、日本の大人も同じだ。
大人に流れる時間と、子どもに流れる時間とは、決定的に速度が違う。そのことを忘れて、忙しにかまけて埋もれてしまう彼らの叫びをそっと拾い上げ、彼らと同じ視線の高さまで腰を落として、それでもなお彼らを清廉に描くことなく、鮮烈にフィルムに焼き付けたこそ、この映画は素晴らしいのだと思う