安堵霊タラコフスキー

ラスト・オブ・イングランドの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

5.0
久々に映像芸術家として好意的見解を抱いていたデレク・ジャーマンの作品を見てみて相変わらずセンスが素晴らしいと惚れ惚れしたたけど、この作品は特にケネス・アンガーやカルメロ・ベーネらの作品に通じる際どさや映像の過激さみたいなものがあって、デレク・ジャーマンのマイベストとなるくらい気に入ってしまった

モノクロ映像に色を付けたように赤や紫で不穏な色付けをしている点から始まり、欲求不満な若者やテロリズム等破壊的で暴力的なイメージが繋ぎ合わさったかのような全体の作風、そんな情動的映像を早送りやフラッシュバック等遊び心も感じられる編集を加えて羅列していくスタイル、加えて冒頭の意味深だが特に意味のなさそうなモノローグ以外ほとんど台詞のない点も合わせ、そのロックさすら感じさせる様々な要素にとにかく琴線を震わせられて半ばトランス状態になりながら見ていたのだけど、それだけでなく終末的世界観もしっかり画面から伝わってくるのが尚のこと良い

映画においては現実世界以上のものを表現したものこそ真に素晴らしく、それは仮装でなく現実世界での映像をただ加工して作り上げたものなら一層良いと考えているのだが、この映画における表現こそまさにその最たる例で、こうした技法のみで夢想の境地に至らせてくれる作品は実に尊いものだし、そんなものを作る監督は尊敬せずにはいられない

ちなみにこの映画で特に気に入ったシーンは国旗の上で裸の男が兵士と性行為をしているところで、下にある国がレイプされてるような構図に皮肉的なものを感じ変な笑いがこみ上げた

それにしてもこういう最高に過激な芸術作品を見た後だと物語のための映画というものが映像的魅力に乏しく冗長で退屈なものに思えて少し困ってしまうが、逆にこうした純粋に映像表現にのみ力を入れた作品の魅力にやられてしまったせいで物語性を重視したものがつまらなく思える体質となったのかもと我ながら思う