ブタブタ

ラスト・オブ・イングランドのブタブタのレビュー・感想・評価

4.0
80年代末から90年始め位迄のバブル末期の思い出と言うと真っ先に思い出すのが西武グループ・堤清二氏による文化事業、セゾンそしてリブロ文化で、自分は当時高校を出て働き始めた頃で仕事終わりに池袋に寄って必ず行ったのが書店リブロとその中にあったアート専門書店アールヴィヴァンと道路を挟んで向かいに立っていた池袋WAVE。
ガラス張りで中心が吹き抜けのビルで六本木WAVEと並びまだネットの無い時代ですから輸入ビデオや洋楽やサントラ輸入CDなどあれ程の在庫を誇る店はありませんでしたし見てるだけでも楽しかったです。

そしてミニシアター系の映画館にも通い詰めていてデレク・ジャーマンやピーター・グリーナウェイ等の難解な前衛・実験映画の存在を知ってハマったのもあの頃でした。
ペヨトル工房と言う出版社からデザイナー、ミルキィ・イソベ氏による素晴らしい装幀デザインでWSバロウズやキャシー・アッカー等の前衛文学作品が続々と発刊されてたのも今では信じられません。

デレク・ジャーマンもバロウズのファンで『裸のランチ』等の実験小説は自身の創作にも非常に影響を与えているそうです。

思い出話しと長い前置き終わり。

デレク・ジャーマンの作品は明確なストーリーはなく、その映像・イメージの散文詩的な集合体。
フィクションともドキュメンタリーともつかない映像のコラージュでそれはバロウズの実験文学、カットアップやフォールドインの映像化にも見えます。

それから塚本邦雄の前衛短歌も思い浮かんで、塚本邦雄の幻想的・反写実的な短歌の世界はデレク・ジャーマンの本作『ラスト・オブ・イングランド』の現代のイギリスを映しながら何処でもない世界を写してる様な、幻想的かつ反写実的な塚本邦雄短歌を映像化した様にも見えました。
特に有名な塚本邦雄の短歌「革命歌作詞家に凭りかかられてすこしずつ液化してゆくピアノ」は言葉の意味よりも音の響きの方が重要と言う意味合いを持つらしく、まるでラスト・オブ~の抽象的かつ幻想的な世界を謳ってる様にも感じました。

赤と青のモノクロ映像。
近未来の大英王国の崩壊。
テロと暴力、燃え上がる街と武装警察隊、廃墟と麻薬中毒の若者。

暴力的・破壊的イメージの数々は現実へのアンチテーゼで美しい虚構のもうひとつの世界を再構築する様です。







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