菩薩

孤独な声の菩薩のレビュー・感想・評価

孤独な声(1978年製作の映画)
4.2
処女作にして既に漂う巨匠の風格、何かしら尋常ではない雰囲気を感じさせる。当然タルコフスキー的でありながらも、タルコフスキーとは似ても似つかぬ大胆かつ乱暴で荒々しい編集、その反面映像は非常に美しい。ストーリーはごく簡素なもので、革命戦争後の紛争から帰還した青年の生と死、破壊と再生を巡るものなのだろうが、戦争で他人を殺しながらも自分を殺せなかった事に対する罪悪感や、心的外傷による男性機能の不具、ささやかな幸せすら放棄したくなる人間性の破壊が観る側にも重くのしかかってくる。終始冷たさと絶望感、タイトルの通り孤独の苦しさを存分に感じさせながらも、ラストには過去から未来へのささやかな希望を垣間見せる。ゲルマンがカネフスキーを掘り起こしたように、タルコフスキーがソクーロフを、一度は葬り去られかけたこの作品を守り抜いたのは、もはや必然と言えるのではなかろうか。
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