うるちまい

ゾディアックのうるちまいのネタバレレビュー・内容・結末

ゾディアック(2006年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

実際にアメリカで起こった事件を元にした映画


 元々、ゾディアック事件の概要程度は聞いたことがあり未解決事件の類だと認識していたので、どう落とし所を作るのか気になっていた。


 ミステリーやホラー映画ではなく、至極内面的な模様を描いた作品。
 ゾディアック事件を前に登場人物らは事件解明に熱意を注ぐ。犯人の実態を掴めないまま増える犠牲者、過ぎる時間に1人、また1人と捜査から離れていく人々、削られる人員。残された人々は正義感、好奇心、はたまた使命感からゾディアックを追い続けるが、次第にその熱意はある種の執着へ変わる。
 真実を追い求める人々が、次第に沼にはまっていき、メンタルや家庭がポロリポロリと崩れていく様が重い雰囲気で描かれている。


 新聞社に勤めるカートゥーニスト(風刺画師?)の主人公はパズルが好きで、ゾディアックから送られてくる暗号文に興味を持つ。初めは事件を側から見ていた主人公だが、暗号文だけでなくゾディアック事件そのものに興味を持ち始める。時が経ち捜査が行き詰まるにつれ、より謎に対して探究心が膨れていく。自身の危険を顧みなくなり、家庭を蔑ろにし、家を出ていかれてしまう。それでもあまり落ち込む姿はなく、よりのめり込む様になる。


 奥さんに、警察でもない貴方が何故そこまでするのか聞かれた際には「誰もやらないから」と。
家族から離れ、仕事を辞め、全てを事件に捧げる姿は病的ですらある。
 別れ際に「じゃあ、とことんやって。やり終わったら会いに来て」と言い放った奥さんは作中の誰よりもカッコ良かった。


犯人(仮)を突き止め、店で働く容疑者の顔をまじまじと見つめながら、映画は終わる。
その際に主人公が何を思ったかは語られない。

一緒に解いていたパズルを人々が放棄し始めたせいで、好奇心から執着や使命感へ変わり、勝手に人のピースまで請け負い、パズル以外出来なくなる。そんな印象。

何かに向けるエネルギーが段々と度を越していき、負の方向へ進んでいく。何事も程々の方が、一般的な幸せは手に入りやすい。
そんな事を言われている様にも感じた。

生々しい殺人シーンはあれど、ビジュアルよりも重苦しい雰囲気を味わう映画。
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