佐藤でした

ジャーヘッドの佐藤でしたのレビュー・感想・評価

ジャーヘッド(2005年製作の映画)
4.0
1990年夏、湾岸戦争中のサウジアラビア。海兵隊員に憧れ、厳しい訓練に耐え、狙撃手として戦場に立った若き兵士。しかしそこには、銃を向けるべき敵はいなかった。待機‥訓練‥待機‥訓練‥を繰り返す砂漠の炎天下で、「人を撃ち殺してみたい」という思いだけが膨張していく‥。

原作本は全米ベストセラーとなり、ニューヨークタイムズが 『戦場の兵士たちの恐怖と退屈、孤独と猥雑と絶望を描ききった、戦争文学の最高峰』と評したように、映画化した今作も妙に愉快で恐ろしい戦場がリアルに映し出されていた。

アメリカでの訓練時代、みんなで「地獄の黙示録」の名シーンを観て、戦隊モノを見る子供のような眼差しで歓喜する姿なんかすでにイカれている。撃てー!殺せー!と叫ぶ神経は理解できないが、あの名作に沸く気持ちはわかる気がするし、観たのが午前2、3時だったこともあって、前半から妙に楽しくなってしまった。

また、今作は色んなジェイクが見られるので、密かにジェイク祭りを開催中の身としては大大満足。ジャーヘッド刈りのジェイク、トランペット風に歌わされるジェイク、サンタ帽×全裸で踊るジェイク。砂嵐の中で口半開きで呆然と立ち尽くす横顔や、ブルーの眼光で的を睨むスナイパーとしての顔など、複雑な表情も印象的だった。

ジェイクジェイク言っているが、サム・メンデス監督の映像表現へのこだわりにも魅了された。砂漠に点在する油田から火柱が立ち上る光景は圧巻。噴き出す油でギトギトになった馬がにゅっと闇から現れたりもする。

その炎を眺めながら、帰還後の除隊を望む兵士に、上官は言う。
「普通の仕事もしたが、俺はここ(戦地)が好きなんだ。こんな景色、他じゃ見られないだろ?」

天まで届くいくつもの火柱と黒煙。上官の言葉は、その場所に広がる映画製作の現場のことも示されているようで、メンデス監督の映画作りへの愛と狂気を感じた。
佐藤でした

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