ぷーや

ジャーヘッドのぷーやのレビュー・感想・評価

ジャーヘッド(2005年製作の映画)
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銃後では全くありえない、人の命を奪うことを是とする価値観の刷り込みと、終わりの見えない待機によって生じる故郷での生活とのズレによって、スウォフをはじめとした中隊の皆は少しずつ変わっていく。砂漠へ到着直後、誰かが口にした勇猛な「ぶっ殺してやる」と、終盤トロイがすがるように言う「殺させてくれ」は、求めるところは同じであっても、そこに至るまでの思考過程は全く異なる。惨たらしい味方の死や自らの手による殺しだけが精神の変調をもたらすわけではない。
スウォフやトロイ、あるいは戦勝パレード中にバスに乗り込んできた(ベトナム?)帰還兵が示すように、戦後、心に埋められない穴が空いてしまった者もいれば、職場や家庭に戻る者もいるし、あるいは戦前戦中戦後いずれでも全く変わらない者もいる(三等曹長)。戦争の虚しさを感じさせながらも、その当事者であった者たちを画一的に英雄とも狂人とも悲劇の人とも描かないことにサムメンデスの思いを見る。
しかし何よりも、終盤、スウォフのボイスオーバーによって「戦争は皆違うが、どの戦争も同じだ」と語られたのが、先の帰還兵が寂しげにバスのシートに座り込んだシーンであったことがこの映画の本旨だろう。
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