ジャイロ

肉体と悪魔のジャイロのレビュー・感想・評価

肉体と悪魔(1926年製作の映画)
4.2
4歳児「ぼくんちのくるま、探検にでてるんだ♪」

保育園の先生によると、そんなことを嬉しそうに周りに言いふらしていたらしい 。4歳児よ「探検」ではなく「点検」ね。車検に出しているだけだから。お前が思ってるようなアドベンチャーなんて、してないから。

そうは言ってはみたものの『カーズ』みたいに擬人化された我が家の愛車が「車検」という名の大冒険にたった一人で出掛けているのを想像したら、みんなの元に無事帰ってきて欲しいと願わずにはいられないのであった…

『肉体と悪魔』

これはMGMのサイレント。主演はジョン・ギルバート、それにスウェーデンのグレタさん。もちろん環境活動家の方のグレタさんではありません。ガルボの方です。グレタさんと同郷、スウェーデン出身の女優グレタ・ガルボです。

ウルリッヒ役の人は『風』や『真紅の文字』でリリアン・ギッシュと共演していたラルス・ハンソンじゃないですか。私としては、主演のジョン・ギルバートより馴染みがあったりします。

冒頭の淀川さんの解説では、まだ若かりし日の淀川さんとクラレンス・ブラウン監督の偶然の出会いと、映画について夜を撤して語り明かした話が聞けます。

「ブロマンス」

それは「兄弟(Brother)」と「ロマンス(Romance)」を組み合わせた造語。強い絆で結ばれた男性同士の関係を指すんだそうな。非常に親密だが、性的・恋愛的な要素のないプラトニックな関係であることが大きな特徴なんだとか。シャーロック・ホームズとワトソンみたいな関係。

ジョン・ギルバート演じるレオと、ラルス・ハンソン演じるウルリッヒ。血判の儀式により結ばれた二人の友情がもうね、ドキっとするほど近しいしボディタッチも熱い。熱々の友情なわけです。まさにブロマンス。そしてそこに割って入る女、グレタ・ガルボ。愛に身を委ねる女フェリシタスの存在に、行き着く先がもう悲劇の予感しかしない。

シュトルテンホフの舞踏会という響き。空回りの恋が切ないヘルタが哀しい😢

そして神秘的な魅惑のフェリシタス

グレタ・ガルボって『ニノチカ』の時もそうでしたが、何を考えてるか分からない不思議ちゃんな感じが神秘的なんでしょうきっと。

心の距離を見定める口移しの煙草。マッチの炎に照らし出される二人の顔。男と女。このあたり、実に情緒的で素晴らしいですね。このシーンだけでも観る価値があります。

そしてその愛には

命を賭ける価値がある

引きの画面からの見えない決着まで、その決闘シーンが良かったなあ。そしてやっぱりそう来たかという展開。前半は壮大な前フリだと思ってましたよ。なんという運命、なんというファム・ファタル!!

本当の気持ちを隠して生きていくことなど出来やしない

逢う度に切なくなるのなら

もう二度と逢わない方がいい

すべては終わったことだから

そう言いながらも想いは募るばかりだ

ああ、レオ

辛いなこれは…


目をそらした方が負け

邪悪な顔してるけど実はいい人な牧師さんとレオの世紀のにらめっこが熱い。

そして双子!!(笑)

ここで双子を持ってくるなんて正気か!?(笑)

こういうユーモアは大好きです。

グサリグサリと突き刺さる今朝の説教はことさらに熱い!!サイレントなのに感情を露にした牧師さんの震える声が聞こえたような気さえしました。

目元がマレーネ・ディートリヒに見えたりしながらも、ゾッとするほど美しいグレタ・ガルボ。神秘的な瞳の奥に知性を感じさせる女。

その誘惑はもう完全に悪魔です。

あれは抗えない

無理

だって悪魔なんだもの

更にそこからの扱いがひどい

ひどすぎる

ひどすぎてレオが凄い顔してた(笑)

悪魔だなあ

悪魔が肉体を借りてやって来てる…

やがて事態は差し迫り、愛と憎しみが渦巻く悲劇の幕がゆっくりと上がっていくのです。ラスト10分は実に見応えありました。

甘い恋の香りがしました。細やかなユーモラスで楽しませてくれる。ひとつひとつのシーンが実に丁寧で、演出に驚きのスパイスがまぶしてある。ロマン派ですねクラレンス・ブラウン監督。