Ash国立ホラー大学院卒論執筆

回路のAsh国立ホラー大学院卒論執筆のレビュー・感想・評価

回路(2000年製作の映画)
4.5
【傑作難解ホラーを徹底考察】

後半は理解が難しいけど、前半の怖さは歴代級。幽霊のビジュアルや妙な歩き方、人の怨嗟の叫びのようなBGM、謎だらけの重苦しい雰囲気、だが確かに存在する圧倒的恐怖etc…様々な要素が絡み合い極上のテラーをもたらす。

前半部分だけで言えば、今まで観てきた140本ほどのホラー映画の中でトップクラスの怖さと不気味さだ。「恐怖」の演出においてJホラーが辿り着いた一つの到達点だと思う。

「霊界が定員オーバーだから魂が溢れ出る」という「地獄が定員オーバーになったから死体がゾンビ化する」的な理論で中々興味深い。『ゾンビ』でもスクショを撮ったほど好きなセリフだから尚更


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↓《ネタバレ》ネットでブログ等を確認しても適当な解説しか見つからなかったので、個人的な解釈で解説しようと思います





●「回路」とは何か
「回路」は死者と生者の世界を繋ぐもの、ある種橋や扉のようなものだろう。そして、その「回路」は恐らくあの赤いテープで塞いだ扉のこと。

「ある日それは、何気もなく、こんな風に始まったのです」と最初の謳い文句。あの工場の労働者は"偶然"赤いテープを用いて"偶然"あのように扉を塞いだ。それが偶然、「回路」ということになったのだと思う。


●なぜみんな次々と自殺するのか
春江(小雪)の大学院の先輩が「霊界が定員オーバーだから魂が溢れ出る」とゾンビみたいなことを言ってたけど、恐らく最初に溢れ出た魂(言わば幽霊)があまりの孤独に耐えられず、生者の世界に接触を試みた結果、自殺者が出てそれが核分裂反応のように広がっていった、と思われる。

そして抵抗なく自殺出来たのは、「回路」の中?で死者と触れ合うことにより、生者と死者の世界は変わらない、と認識した為。後は「助けて」と言って死者が生者を求めていたのも自殺原因の一つでしょうね。

例えば、隣の部屋で誰かが助けを求めていた場合、気になって確認しに行きますよね。で、その隣の部屋が死者の世界で、自分がいる部屋が生者の世界。現実では、「隣の部屋」である死者の世界は、「どうなっているのか分からない」ので怖くて多くの人は逝きたがらない。だが、死を理解して同じだと分かれば、何の恐怖もなく「隣の部屋」に逝くことが出来る。

川島やミチ、あの船長や南米の人?が中々自殺しなかったのは生者の世界を強く肯定していたのと、幽霊と接触がなかったからでしょうな。


●まとめ&感想
溢れ出た僅かな魂がその永遠の孤独を癒す為生者を呼び、さらに幽霊が増え連鎖的・爆発的に自殺者が増えた。幽霊による世界滅亡の叙事詩。おー怖い怖い。

川島は唯一の生きている友達で想い人だった春江に逢う為に最後にガソリンを飲んだのでしょうか。『リング』や『呪怨』などのように幽霊に呪い殺されるわけではなく、引き寄せられるように、あくまで自分の意思で自殺してしまう。中々に悲しいお話でございました<(_ _*)>



「ある日それは、何気もなく、こんな風に始まったのです」