カール・テオドア・ドライヤーの吸血鬼。
白日夢なのか夜なのかわからない。
日光か月光かもわからない。 美しく儚げな映像で綴られ、幻影に惑わされた旅人の不安と恐怖を、勝手に動き出す影で表しています。陰影の表現でこれ程に不穏な空気を表すとは素晴らしいです。
短くされてしまった作品だそうですが、省略されたため、余計に怪しげな雰囲気を醸し出していて、今のところ吸血鬼ものではいちばんの怖さを感じました。
残酷なシーンはなく(ラストのお仕置き除いて)、誰がバンパイアなのか伝説の婦人以外によくわからなかったのもいいです。
影だけが見える表現や棺の窓から死者が見る景色を見せるアイデアは秀逸です。
ポランスキーのコメディの「吸血鬼」の博士はこの作品の医師のオマージュみたい。似てました。
もう一度観たい作品です。耽美な世界観でした。