ドラッグ密輸で大儲けした青年が、チョッパーバイクのタンクに大金を隠したまま、カリフォルニアからニューオリンズまでの長距離移動を敢行する。ハリウッドの形骸化されたスタイルを打ち破ろうとしている、アメリカン・ニューシネマの金字塔的作品。
アメリカン・ドリームを追い求めている夢追い人が、庶民の悲喜に干渉しながら旅を続け、最後には敗北を味わう。これまでのハリウッドが描いてきたドラマとは正反対となる雛形を、あらためて構築させている（ヌーヴェルヴァーグの流れを汲んでいる）。
また本作では、ゲリラ撮影と即興演技を駆使することにより、当時の空気感を映像に封じ込めることに成功。小さなセットを組んでいるシーンがあるけれど、劇中に登場するヒッピー・コミューンは本物の映像。
アメリカ国民（とくに若者）がフラストレーションを抱えていた時代のカウンターカルチャーというものを、真っ向から受け止めることができる逸品。あえて欲を言えば、劇中で流れる楽曲の歌詞を、日本語字幕で表示して欲しかった。
