つくづく「アンネの日記」は文学作品なんだという感慨。「映画」という形で見せるには、本作はドラマが描きづらい性質を持っている。
アンネ・フランクが13歳の誕生日にプレゼントされるサイン帳。
そこに書き込まれていくのが「アンネの日記」とされているものになる。
そのモノローグを通じて、当時のオランダの世情。第二次世界大戦におけるヨーロッパ戦線の状況。何よりその「隠れ家生活」の悲喜交交が描かれる。
ただ、その日常。特に隠れ家で息を潜めて暮らしている姿を「映画」という形で映像で見せてしまうと、却って状況がよくわからなくなってしまう。
本作が描こうとしている「戦争」に対するメッセージも、アンネ・フランクの心の内も、文章を通じて想像する方が物語を描けるというもので、難しい。
本作はあまりそういう「機能」の部分には残念なことに視点が向けられていない。
描かれていることは「本を読めばわかる」ということで、それ以上に映像で伝えるべきものが「映画」の役割なのだが、そこは平板に感じる。
文科省推薦、というような「教育映画」というカテゴリに分類されるような作品のテイストであるが、その「教育」という点では、戦争や人種差別「的」な行為の恐怖や歴史的背景すら、なかなか伝わりづらい映画だとは思う。