別れた妻、リーへの慰謝料で首を絞められている電気技師のガスは慰謝料から逃れるため、リーに最高の恋人を見つけようと奔走する。
NYを舞台にしたロマコメ。なんとなく上品さを醸し出しておきながらも嫌味はなく、ウィットにも富んだこの作風。監督がアンソニー・ミンゲラということにただただ納得。未だDVD化していないのが惜しまれる作品のひとつ。
リーを演じたアナベラ・シオラがひたすら美しかった。マット・ディロンはその辺にいる労働者の役だが、出身がNYということもあり、実はかなり素の部分もあるのでは?Cutで表紙を飾った号の特集ページには【マット・ディロンに会いたければNYのダウンタウンを徘徊すればいい】という一文があるぐらいなのだから、本作での役は自身に溶け込んだところも少なからずあるのだろう。隣のアンちゃん風な雰囲気が良い。
一度関係が壊れ、心離れた二人が再び歩調を合わせようとする道のりはえらく遠回りで、観ている方は実に焦れったい。この感覚、なかなか出逢わない男女を描いたブラッド・アンダーソンの『ワンダーランド駅で』のようにも思える。
割れた皿のように粉々にくだけ散ったものを修復するのは難しい。しかしそれはある意味では新たな旅立ちでもあるということだ。
にしても高い皿は簡単に割れる。安い皿はわざと床に落としても割れないんだから。なんて皮肉なんだ。