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ロッキー・ホラー・ショーの都部のレビュー・感想・評価

ロッキー・ホラー・ショー(1975年製作の映画)
3.5
The カルト映画と知られる本作は、現代的な価値観に則っていえば『ロック調のクィアミュージカル映画』とカテゴライズすることが可能ですが、公開当初の1970年代後半にそれをするのは土台無理な話でしょう。

狂言回しを務める強烈な登場人物であるフランクン・フルター博士の主導の元に語られる愛の物語は突飛さに塗れており、典型的な痴情のもつれに陥ったかと思えば、話が一足飛びにあさっての方向に進展していく奔放さにはある種の快感を感じ取れます。そんな物語をかろうじて束ねるのは城内のクィアな人間達と語り部である夫妻のミュージカルの応酬であり、物語に対する理解が離れそうな時分を狙い済ましたように、その心境や奇怪な状況を堂々たる態度で歌唱という形で解体し晒すので気が利いているような気がしないでもない。気の所為かもしれない。

不連続性が美学と言わんばかりの背景美術と物語構成は味の尽きないバブルガムのように愛おしい魅力を誇っており、絢爛豪華とチープさの同居した絵面が連続して飛び込んでくるのは実際かなり癖になりますね。オフビートで背徳的な笑いのセンスがスパイスとして良好で、語り部同様に見ているこちらの心の深い部分にずぶずぶと遠慮なく侵食してくるような妖しさは往年のカルト的名作として好かれるだけのことはある。

話の流れから『フランケンシュタイン』が物語の下地になっているんだろうなと思って眺めていたら、終盤に驚きの事実が発覚して、あのセリフ冗談じゃなかったのかよとなったのが、でも一番面白かったかもしれません。
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