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WANDA/ワンダのturuのレビュー・感想・評価

WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)
4.8
地元のミニシアターでかかるまで存在すら知りませんでした。
長らく埋もれていたバーバラ・ローデンの遺作でもあるアメリカインディペンデント映画。
自分の居場所を放棄したアメリカの労働階級の女性が、ただただ社会の底辺を当てどなく浮遊していく。ビールを奢ってくれる男目当てに。ふとしたことで犯罪に巻き込まれるが、そのまま犯人であるMr.デニスについていく。

意志や内面を持ち合わせず男に搾取され続けるワンダ。もしかしたら何らかの障害を持っているのかもしれない。カタルシスを付け加えて物語にオチをつけることもせず、突き放した荒削りな描写。

荒涼とした採掘場と作業するダンプの遠景、カーラーつけっぱなしで法廷に登場、パスタを汚く食べる、地下墓地、ラジコンの飛行機…ザラザラした質感のフィルムで焼き付けられるシーンが続く。

実際の銀行強盗の犯人で、モデルになったアルマ・マローンは、「生きる理由はあまりないけれど、私は生きていたかった」と話したという。
こんな作品を生み出したバーバラ・ローデンの才能の凄さ。

人の空虚な様をただ空虚なまま描かれると、自分の中の空虚が呼応して彼女のいるエアポケットの中に一緒にスポッと入ってしまいそうになり怖くなる。

この映画を見てから、ワンダの事ばかり考えています。この映画に出会えて本当に良かった。
あんまり人にオススメしにくい映画だけども。
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