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大病人のterusukのレビュー・感想・評価

大病人(1993年製作の映画)
3.9
伊丹十三の七作目。
伊丹十三の死生観、人間観の反映された作品。

現代ではおそらく当たり前となっている、がんの告知、所謂インフォームドコンセントは、当時は意見が割れていてケースバイケースだった。
告知しないことのメリットも重視されていて、医師個人の判断ではなく病院自体の判断であり、チームの判断に勝手な反乱は出来ない。

人間の尊厳をどう考えるか、改善の見込みの極めて薄い延命治療の是非を突き付け、クオリティオブライフの考え方にも触れている。


乱倫状態の俳優兼クリエイターを演じる三國連太郎は、見事に持ち味を発揮している。
助平なおっさんが余命を告げられ死を意識し、覚悟を決め、覚醒する過程を違和感なく演じ切っている。


この作品は、インフォームドコンセントが法的に整備される以前の時代に提示しているわけだ。
この点、伊丹十三の視点や感性は怪物的と言える。
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