昨日観た「スイートビターキャンディ」の流れで、どうしても観たくなって配信で観直しました。
2004年の映画館での上映当時、あるカルト教団をモチーフとした今作のドライブ感と主演の2人の圧倒的な演技と存在感に、塩田明彦監督作品の最高傑作と感じて今に至るのですが、今回改めて観ても、それはほとんど揺らぐことはありませんでした。
無差別テロを起こしたカルト教団解散の後、入信した母親は行方不明になり、児童養護施設に預けられる光一は、祖父母に引き取られた妹を取り戻すために施設を脱走し、その道すがら、援助交際する少女、由希と出会い、一緒に東京を目指すという物語。
大きな目的に対して、不器用な生き方を選択せざるを得なかった2人の道筋と、動き続ける時間の中でそれまでと違う生き方模索していく、元信者たちとの不寛容さ、心から信頼できない大人たちからの脱却が、苦しくて美しい、重苦しい作品ですが、手持ちカメラでのライブ感が常にあって、最後までどのように折り合いをつけるのか、ヒリヒリする作品でした。
当時は、主演の石田法嗣さんのと谷村美月さんの存在感だけに目が行っていましたが、西島秀俊さんの役は強く前に出る感じではなかったため、あまり印象に残ってなかったとか、江口のりこさんがさりげなく出演していたり、新たな気づきもありました。
変容していく世界の中で本当に信じられるものなんて、簡単に見つからないと気づくまでの時間の揺らぎは尊いもので、その選択が正しいかどうかは分からないですが、こういう不寛容さが揺るぎない形で映像化されて、当時の息苦しさからあまり変わっていないことをどう捉えるか、フィクションとしての線引きとか、配信で観ると熱量は変わってしまうと思いますが、ある1つの時代の目線としての今作の価値は下がることはないと思います。
